起業したら所得控除はどうなる? 個人事業主やひとり社長も必見

起業したら所得控除はどうなる? 個人事業主やひとり社長も必見
★結論

起業したら所得控除を活用して合法的に節税しよう

所得税の控除はアルバイトやパート、会社員や個人事業主など、雇用形態にかかわらず働いて所得を得ている、すべての人に関係が深い制度です。
 
所得控除を活用すれば合法的に節税ができますが、具体的にどうすればいいのかお悩みの方も少なくないでしょう。
 
そこでこの記事では、所得控除について詳しく解説しています。ぜひ参考になさってください。

控除とは?


税における控除とは一定の要件に該当することで、本来支払うべき税額から若干無税にできる金額のことを指します。
具体的には医療費や住宅ローン、保険料の支払いなどが該当します。
 
所得控除や特別控除など課税標準を計算する途中で控除されるものと、税額控除など課税標準に税率を乗じて計算された金額から控除されるものに大別されます。

所得控除

所得控除とは納税者の生活状況に合わせて、所得額から一定の金額を差し引く制度を指します。
所得税は1年間の所得に決まった税率をかけて算出します。
 
所得控除を適用すると自身の所得金額が少なくなり、結果的に納税額を低減することができます。
 
得控除は15種類あり、納税者の生活状況によって、それぞれ適用されます。15種類の詳細については後ほど解説します。

税額控除

税額控除とは課税所得金額に、所得税の税率を乗じて算出した所得税額から、一定金額を控除するものを指します。
 
所得税の場合は課税所得金額に税率を掛けたものが所得税額となります。
しかし、その算出された所得税額から、一定金額を差し引くことが可能です。
 
税額控除は計算した税額から、直接控除できるので節税効果が高くなります。

基礎控除

基礎控除とは所得税の額を算出するときに使われる所得控除の1つを指します。
基礎控除を差し引くことができれば所得も低くなり、それだけ納めるべき税金の額も低減します。
 
基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を合わせると103万円になり、年間103万円以下の所得であれば所得税は発生しません。
 
この金額を超えると課税されるため、103万円の壁といわれています。

所得控除は全部で15種類

所得控除は全部で15種類あります。表にまとめたのでご確認ください。
 
所得控除一覧

控除の種類 控除が受けられる場合
雑損控除 災害や盗難、横領によって損害を受けた時に適用される
医療費控除 一定額以上の医療費を支払った場合。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる
社会保険料控除 健康保険料や国民健康保険料、国民年金保険料や厚生年金保険料など、社会保険を支払った場合に適用される。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される
生命保険料控除 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で支払った保険料がある場合に適用される
地震保険料控除 地震保険料を支払った場合に適用される
寄附金控除 ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄付をした場合に適用される
障害者控除 納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される
寡婦控除 配偶者と死別または離婚して扶養家族がいる場合に適用される
ひとり親控除 納税者がひとり親であるときに適用される
勤労学生控除 学校に行きながら働いている場合に適用される
配偶者控除 配偶者の合計所得が48万円以下の場合に適用される
配偶者特別控除 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以上133万円未満である場合に適用される
扶養控除 16歳以上の子供や両親などを扶養している場合に適用される
基礎控除 すべての人に適用される控除

「人的控除」と「物的控除」に分類できる

所得控除は「人的控除」と「物的控除」に分類できます。人的控除とは「ひとり親である」「配偶者がいる」など、納税者の個人的な経済事情が反映される控除を指します。
 
具体的にはひとり親控除や配偶者控除などが該当します。物的控除とは社会政策的な配慮から設けられる控除を指します。具体的には医療費控除や寄附金控除などが該当します。

個人事業主や企業が意識すべき控除はどれ?

個人事業主や小規模な企業が意識すべき控除はいくつかあります。
ここでは小規模企業共済等掛金控除と寄附金控除、そして青色申告特別控除について詳しく解説します。
 
いずれも申告しなければ控除は受けられません。忘れずに申告するようにしましょう。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除とは、納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に、その支払った金額について所得控除が受けられることを指します。
 
控除できる掛金は次の3つです。

  • 小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
  • 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
  • 地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金

いずれも支払った掛金の合計額から控除されます。

寄附金控除

寄付金控除とは納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合に所得控除を受けられることを指します。
 
「寄附金支出合計額」と「総所得金額等×40%」の、いずれか少ない方から2,000円控除されます。金額は小さいかもしれませんが、申告すれば控除されるので、忘れないようにしましょう。

青色申告特別控除

青色申告特別控除とは、青色申告で所得税の確定申告を行う個人事業主が、課税所得額から一定額を差し引ける制度を指します。
 
課税所得額が下がるので所得税が軽減され、住民税や国民健康保険料の金額が低減されます。特別控除額は最大65万円です。
 
ただし申告方法や記帳方法などにより、65万円・55万円・10万円と適用できる金額は変わります。それぞれ適用条件が違うので、事前に確認しておきましょう。

控除を受けるために必要な手続きは?


個人事業主やフリーランスにとって、控除を受けるために必要な手続きは、毎年の確定申告になります。確定申告は年間の所得から控除を差し引き、納めるべき所得税の金額を計算して申告します。
 
また、確定申告ではすべての所得控除と税額控除の手続きが可能です。
ですから控除を受けるためには、事前に税務署で手続きを済ませておく必要があります。順を追って解説しましょう。

①開業届と所得税の青色申告承認申請書を提出

まず、「個人事業の開業・廃業届出書」を提出しなければなりません。
書類は税務署でもらえますが、国税庁のホームページからPDFでダウンロードもできます。
 
青色申告を行う人は、開業した日が重要になるので、実態に合わせて正確に記載してください。
必要事項を記入したら、開業届に記載した納税地を管轄する税務署に、出向くか郵送で提出します。
 
このときに合わせて青色申告承認申請書も提出してください。
青色申告承認申請書も税務署でもらうか、国税庁のホームページからPDFでダウンロードしてください。

②確定申告書を作成し、必要書類を準備する

確定申告書を作成する際には、次の書類が必要になります。

  • 確定申告書
  • 収支内訳書または青色申告決算書
  • 固定資産台帳
  • 準備しておくものは次の通りです。
  • 領収書、レシートや帳簿
  • 源泉徴収票など
  • 保険料控除明細書、医療費控除の明細書、寄付金の受領証など
  • マイナンバーカードなど
  • 金融機関の口座情報

これらを用意して確定申告書を作成するわけですが、確定申告書作成コーナーで作成する場合や、確定申告ソフトで作成する場合は、インターネット上で作業ができます。
 
手書きで作成する場合は税務署でもらうか、国税庁のホームページからPDFでダウンロードしてください。

③確定申告書と必要書類を税務署に提出する

確定申告書の提出方法は次の4つがあります。

  • e-Taxやスマホアプリによる電子申告
  • 税務署窓口への持参
  • 信書による郵送
  • 税務署の時間外収集箱へ投函

無難なのは税務署窓口への持参ですが、確定申告時期は混雑するのが普通です。
また信書による郵送は書留や簡易書留がおすすめです。宅配便は信書にならないのでご注意ください。
なお、レターパックは信書なので利用しても大丈夫です。

会計ソフトによる確定申告で控除をスムーズに


会計ソフトを利用すれば、確定申告で控除をスムーズに行えます。
とはいえ会計ソフトの種類は多いので、どれを選べばいいのか迷われる方も少なくないでしょう。
 
ここでは定評のある3つの会計ソフトをご紹介します。
どれも間違いのないものですが、人により向き不向きはあるので、ご自分にあった会計ソフトをお選びください。

Freeの確定申告

freee会計はフリー株式会社が提供しているクラウド型の会計ソフトです。
質問に回答するだけで確定申告の書類を作成できるのが最大の特長です。
 
白色申告・青色申告・電子申告に対応しています。また、青色申告を行うのに必要な、開業届申請の支援機能も提供されるので便利です。コースはスターター・スタンダード・プレミアムの3つから選べます。

弥生会計で確定申告

やよいの青色申告 オンラインは、弥生株式会社が提供しているクラウド型の会計ソフトです。信頼性やサポート面で高い評価を得ており、簿記や会計の知識がなくても青色申告ができ、シンプルな操作で電子申告を行えます。

コースはセルフプラン・ベーシックプラン・トータルプランの3つが用意されています。セルフプランとベーシックプランは、1年間無料で試せるので、自分に合うかどうか確認できます。

マネーフォワードで確定申告

マネーフォワード クラウド確定申告は、株式会社マネーフォワードが提供しているクラウド型の会計ソフトです。
銀行口座やクレジットカードだけでなく、電子マネー・通販・クラウドソーシングなどともデータ連携が可能なので、帳簿入力の手間を大きく削減できます。
 
青色申告決算書の作成も自動でできるため確定申告もスムーズに行えます。
コースはパーソナルミニ・パーソナル・パーソナルプラスの3つが用意されており、1ヶ月間の無料トライアルが利用できます。

まとめ

所得控除について詳しく解説してきました。
ご理解が深まったことと存じます。起業して個人事業の開業・廃業届出書を税務署に提出する際には、青色申告承認申請書も同時に提出するようにしましょう。
 
青色申告は複式簿記なのでハードルが高いと思われがちですが、会計ソフトを利用すれば比較的楽に作成できます。
 
疑問点がある場合は、ネットで検索してもいいのですが、税務署で相談するのもおすすめです。
もし、どうしても時間に余裕がないのなら、税理士に依頼する方法もあります。